初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
「…………あ」
「もう、分かった、謝るから……放っておいてください」
分かりやすく声が上擦ってしまう。
悔しくてどうしようもなくて、今度こそ新田さんの手を振り払おうとしたが、離れないどころか力が篭っていく。
「泣くなよ」
「っ、うるさい」
最悪。なんなの?
文句を言ってやろうとしたけど、机の上にあった私の鞄を新田さんが掴み、掴んだ手首をそのままに歩き出す。
図書館を出たタイミングで立ち止まり、抗議しようと腕を振った。
「やっ、なにっ」
「こっち」
「嫌です。もうっ……」
「あーもう。俺は、オマエのこと傷付けたいわけじゃねぇんだよ」
「…………」
「ちゃんと話したいから、来て」
振り返った新田さんの懇願するような声と表情に、私の喉はひくりと震え、言葉を吐き出すことをやめた。
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