初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
新田さんは私のアイコンを確認すると、目を輝かせ嬉しそうに口角を上げていた。
「連絡するから、返せよ」
「返せる時に返します」
「何かあったら話していいし」
「分かりました。……それじゃあ、また」
なんてきれいな笑みなんだろう。下がった目尻と笑窪が可愛く見える。
飲み屋で見た、軽薄で人を馬鹿にする笑みとは明らかに違うそれに、私の心臓が妙に脈打ったのを隠すように新田さんに背を向ける。
「じゃーな、香苗」
背中に投げられた声に何故か照れてしまい、私は振り返ることはしなかった。
新田さんとの時間が濃過ぎて、彼の浮気のことが頭からすっぽ抜けていた私は、後からそれを思い出し当たり前に落ち込んだ。
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