初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜




「浮気するような汚い女、別れ──」

 バシャッ



 店内が静まり返る。
 彼氏の言葉を遮るように、その頭の上にアイスコーヒーとフラペチーノが降り注いだからだ。


 彼氏の髪の毛からポタポタとアイスコーヒーが落ちる。


 一瞬何が起きたのか理解ができず、視線を上にズラす。
 そこには、額に青筋を立てた新田さんが、空のプラカップを両手に無表情で立っていた。



「あ、悪い。手が滑ったわ」



 新田さんは棒読みでそう静かに呟くと、首をゆっくりと傾けた。



「どうも。遊び人で有名な香苗の男友達の、新田です」



***



 
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