初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
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そこからは怒涛の展開だった。
私の半泣きの表情に気が付いた新田さんは、彼氏の首根っこを掴み持ち上げるように思い切り立ち上がらせた。
その手には血管が浮いている。
「香苗、後ついてきて」
「はっ、ちょっ……な、何なんだよっ! 香苗っ、なんでコイツがっ」
「最初から居たけど。話は外で聞くから、黙れよ」
新田さんの声は静かなのに怒りに満ちていて、それが自分に向けられているわけではないのに身震いをしてしまうほどだった。
私は何とか立ち上がり、お店の人に頭を下げて先に出て行ってしまった二人の後を追う。
駅前の通りを、新田さんは彼氏の首根っこを掴みながら人気のない方向へとずんずん進む。
彼氏は、自分よりも圧倒的に背も高く体格の良い新田さんへの抵抗を諦めていた。