初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
「ウルセェんだよオマエ。自分よりも強そうな奴の前では縮み上がってるだけなのに、女の前じゃ強気とかほんとクズだな」
「…………」
「つーか、オマエ如きが香苗傷付けてんじゃねーよ」
美人が怒ると怖い。真顔だから余計だ。
新田さんは低い声で淡々と言葉を続ける。
「お前はあんな場所で散々好き勝手話したもんな。だけど、香苗は言いたいことまだ言えてねーんだわ」
新田さんの手のひらが私の背中を優しく叩く。
一人だったら、あの場で思うように何も言い返せず、傷付いて終わりだったと思う。
泣いて過ごした日々、苦しかった時間、もう充分だ。