初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜




「か、香苗っ」
「ちょっと、何なの?」



 座り込んでいたのは元カレだった。
 以前よりも頬がこけて、目が据わっている。付き合っていた頃の面影がない。


 私を見つけるなり大股でこちらに近寄り、縋り付くように腕を掴まれ鳥肌が立つ。



「ごめん、ごめん香苗」
「やめてよ、なんで来たの?」
「俺、後悔してるんだ……香苗はあんなに俺のこと大切に想ってくれてたのに。あんな女に騙されて、香苗と別れたら他の男に乗り換えられてっ……」



 どうりで最近浮気相手との噂を聞かないと思ったら、そういうことか。
 コイツ、とことん女が居ないとダメな奴だな。心から呆れる。


 生理的な嫌悪感から、触れられている腕を離そうと振るが、逆に力を込められ引き寄せられそうになる。



< 94 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop