初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
とにかく、話しを聞くだけ聞いて帰ってもらおう。
そう思い、電気のスイッチに伸ばした手が、ドアが閉まる音と同時に後ろから伸びてきた手に絡め取られる。
「香苗」
至近距離で名前を呼ばれ肩が跳ねた。
お腹に手を回され肩に新田さんの顎が乗る。背中に新田さんの体温の高い身体が張り付き、心臓が大きく脈打つ。
「なんで避けんの。言うまで絶対逃さねーから」
「……そ、それは」
「俺、無理なんだけど。香苗がいないと、もう無理」
「は」
「それなのに香苗は、俺が居なくて平気なの」
新田さんは、何を言っているのか。
情けないほど弱々しい声で、縋るように、懇願するように、まるで自分が傷付いているような言い草に言葉を失う。
平気じゃなかった。けど、遊ばれてると分かっていて傍に居られるほど、私は強くも図太くもない。