もう一度、その声が聞きたかった【完結】
彼の左手にはスプーン。

おかゆに鶏と野菜の炊き合わせ…
おかずはひと口サイズになっているが
左手ではすごく食べずらそうだ。

荷物を片付け終えて、彼を見る。
食事はほとんど進んでいなかった。

私はお茶のパック飲料にストローを刺し
彼のテーブルに置く。

「あの、手伝いましょうか?」

彼は驚いた顔をして私を見た。

「食べますよね?」

『はい…』

「じゃぁ、スプーン貸してください。」

『…お願いします。』

私の圧に負けた彼は
素直にスプーンを差し出した。

彼の口にご飯を運んでいく。

彼は恥ずかしいのか
すごいスピードでご飯を食べ終えた。

私は思わず笑ってしまう。

彼も照れながら笑い返してくれて
昔に戻ったような感覚になった。
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