もう一度、その声が聞きたかった【完結】
16:束縛
勇人の元へ戻る足取りは重く感じた。
圭介の発言は彼の耳にもしっかり届いただろう。
私が今まで隠していたことも…。

『さくら…帰ろうか』

「うん…」

駐車場までの道のり
来る時には繋がれていた手に
冷たい風があたり
彼の温もりがない手は
凍ってしまいそうなぐらい冷たい。

車の中でもお互い言葉を発する事はなかった。

彼の部屋に入り
私はソファに座る彼に話しかける。

「勇人、話があるの。」

『・・・・』

「聞いて欲しい…」

『……別れないよ』

「えっ…」

彼は立ち上がり
私の腕を掴み、冷たいベッドに押し倒した。

「ちょっ…勇人っ」

話す隙を与えない程、激しく唇が塞がれる。

彼の胸を叩いて抵抗するが
ビクともしなくて私はされるがまま。

今は私の話は聞きたくないのだろう。
とにかく彼が冷静になるのを待つしかない。

私は彼が与えてる快楽を素直に感じる。

体を重ねて目を見つめ合い
私の想いが彼に伝わることを願って…。

そんな時間が早朝まで続いた。
< 139 / 168 >

この作品をシェア

pagetop