もう一度、その声が聞きたかった【完結】
(勇人 side)

さくらの言葉を聞いて衝撃を受けた。

よく見ると彼女は涙を流して
震えながら怯えている。

彼女にこんな顔をさせているのは
俺なのか…?

俺はただ…さくらと一緒に…


俺はふと我にかえる。

が、時すでに遅く
彼女は自分の荷物を手に取ると
一目散に家を出て行った。

俺は膝から崩れ落ちた。

彼女と何度体を重ねていても
心の距離は埋まらなかったのだ。

彼女が元カレの事を忘れられないのは
最初からわかってたはずなのに…。

俺は自分の想いだけ一方的に押しつけて
彼女の話を一切聞こうとしなかった。

俺は彼女になんて事を…。

今頃気が付くなんて。

俺がやっていた事は
彼女を縛りつけ苦しめるだけだった。

そんなもの愛でもなんでもない。

こんな俺を彼女が選んでくれるはずないんだ。

あまりにも身勝手な自分に怒りと悲しみが…
もう感情がぐちゃぐちゃでおかしくなりそうだ。



俺は冷たい床の上で静かに涙を流した。
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