もう一度、その声が聞きたかった【完結】
静岡の両親の家に着いた。

前に帰省したのは約1年前。
1年ほどしか住んでいなかったので
実家感はあまりない。

チャイムを押すと母が元気に出迎えてくれた。
なんだかホッとした。

『さくら、おかえり。
あら、ちょっと痩せたんじゃない?』

「ただいま。うーん、ちょっと忙しかったから。」

母は温かいミルクティーを淹れてくれた。

『珍しいわね。年末にこっちにくるの。』

「実はね、年明けから本社勤務なの。
引っ越しも終わった。」

『そうなの?じゃぁ、今東京なのね。
本社勤務なら休みもしっかり取れるわね。
その方が安心だわ。』

母はいつも私が帰るたびに心配していた。
帰省しても1泊だけで帰ってしまう私を。

「今回は年明けまでいてもいい?」

『もちろん。ゆっくりしていきなさい。
お父さんも喜ぶわ。』

私は久しぶりに両親と5日間過ごした。
大晦日もお正月を一緒に過ごして
3日の夜、東京へ戻った。

母は
''またいつでも帰ってきない''と
何も聞かずに力強く送り出してくれた。


私は帰りのバスの中
勇人のことを考えていた。
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