もう一度、その声が聞きたかった【完結】
私は涙を拭きながら話を続けてた。

「圭介と別れて、大学も退学して
両親のサポートを受けながら
赤ちゃんに会える日を心待ちにしてた。
だけど…妊娠5ヶ月の頃
事故に巻き込まれて…
赤ちゃん…産んであげられなかった…」

私はお腹に手をあてて唇を噛む。

「ごめん…」

彼は私の手に自分の手を重ねた。

彼の手の温もりが私のお腹に伝わる。

(赤ちゃんにもこの彼の温もり…教えてあげたかったな…)

私の涙腺は崩壊して嗚咽が漏れる。

彼は私を落ち着かせようと
背中に手を回してトントンと撫でる。

『部屋で話そうか…』

さすがに周りの視線が気になる。

私がうなずくと
彼に支えられて彼の部屋に向かった。
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