もう一度、その声が聞きたかった【完結】
彼の泊まる部屋に入ると
ダブルベッドに腰掛けた。

彼はスーツのジャケットを脱ぎ
ネクタイを外した。


私の目からはまだ涙が流れているが
さっきより落ち着きを取り戻した。

彼はハンカチで私の涙を拭く。

きっと今の私は
涙と鼻水でひどい顔をしているだろう。


彼から水のペットボトルを受け取り1口飲む。

やっとゆっくり息が吸えた気がした。

「ごめんね…取り乱して…」

『正直、驚きすぎて混乱してる…。
だけどこれだけは言わせて?

さくらに嘘つかせて、さくらも子供も守れなくて
ごめんな…
1人にしてごめん…。』

私を抱きしめながら話す彼の声が震えている。
顔を見なくてもわかる。
彼はきっと私と同じだ。

私の涙は簡単には止まらなくて
抱きしめてくれる彼の肩を濡らしていく。

私はまだ言葉にならないけど
何度も首を振り、彼に返事をした。

(圭介はなにも悪くないよ…。)
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