もう一度、その声が聞きたかった【完結】
ぼやけた視界に見えたのは
涙を流している母の姿だった。

『さくら、わかる?』

喉が張り付いて、上手く声がでない。
私はゆっくりうなずく。

『良かった…』



しばらくぼーっと辺りを見渡す。

医師と看護師が来て
ようやく自分の状況を理解した。

私は2日間も意識不明だった。


医師の診察が終わり、母が口を開く。

『さくら、なにがあったか覚えてる?』

「…バス停…で…」

『バス停に居眠り運転のトラックが突っ込んできたのよ。すごく大きな事故だったの。』





「あぁ…。あかちゃ、んは…?」


母の口から出たのは、残酷な言葉だった。




『…助からなかったわ…
さくらの命も危なかったのよ…
きっと、赤ちゃんがさくらの命を守ってくれたのよ…』




母の顔が涙で歪んでいく。
喉の奥が熱くて、苦しい。 


息ができない。

はぁ、はぁ、ちゃんと息が吸えない。
過呼吸だ。

看護師がすばやく処置してくれた。
私は再び眠りにつく。
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