もう一度、その声が聞きたかった【完結】
あの男のことを思い出し
今一人でここにいるのが怖くなる。

ネックレスは元の紙袋に戻し
自分のロッカーの奥に置いた。

受け取りたくはないが
田中に連絡をして会うのはもっと無理だった。


店を出て周りを確認してから
急いでタクシーで帰宅した。

部屋に入ってカギをしめると
恐怖と緊張感から開放された。

このこと彼に相談するべきか…
相談しても遠距離だしどうしようもない。
彼に心配をかけるだけだ。

会社に相談する手もあるが
大ごとになるのは嫌だ。
最悪は異動だってあり得る。
大阪店はスタートしたばかりだから
それは避けたい。

考えた末
しばらくは様子を見ることにした。


これ以上、何もないことを願った。

願いは通じたのか3週間経っても
田中は私の前に現れる事はなかった。
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