もう一度、その声が聞きたかった【完結】
『倉木店長、大丈夫ですか?』

私は扉の方に目線を下げると
私を見上げる、圭介が居た。

「えっ、なんで?」

『まだ作業してるのが見えたので。
今、1人?』

「うん。他のスタッフはもう帰した。」

じゃ、普通に話していいなとつぶやく彼。

『その吊りPOP、替えるんだよな?
さくら、高いとこダメだろ。俺がやるよ。』

彼はスーツの上着を脱ぎ、鞄と一緒に床に置く。


「じゃ、お願いします。」

私は素直に脚立から降りた。


「圭介、ついでにライトもお願いしていい?」

はいよ。とスムーズに作業をこなす彼を
下から見上げていた。


私が苦手な事、まだ覚えてくれてたんだと
嬉しくなった。

彼と昔のように話をしたのは
再会したあの日以来だった。
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