もう一度、その声が聞きたかった【完結】
作業を終えたのは23時半を過ぎていた。

「手伝ってくれてありがとう。
終電あるし、急ごう。」

『さくらは何線?』

「私は地下鉄だよ。圭介は?』

『俺も同じだ。急ごうか。』

駅まで特に会話はなく早歩きで向かった。

改札を通り、立ち止まる。

「私、1番線だから…」

『あぁ、俺は反対だから、ここで。』

''じゃあね"と別れて歩き出した。


やはり圭介に会うと一瞬あの頃の感情が蘇り
胸がドキドキする。

彼に悟られないように必死に装っていた。

私には圭介しか見えていなかった。
だからずっと見られていた事に気付かなかった。
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