もう一度、その声が聞きたかった【完結】
『お仕置きだから…』

田中がつぶやいた言葉が微かに耳に届いた。

私の体はうしろに倒れ、
階段を転がり落ちていく…はずだった。

『さくらっ!』

私の腕が引っ張られ、
懐かしい香りと温もりを感じた。

スローモーションの様に視界が反転して
誰かが私の体を強く抱きしめている。

抱きしめられたまま階段を滑り落ちた。


''キャー"
周りから悲鳴が上がる。


『ゔぅーっ』

私の体の下から苦痛の声が聞こえた。

「け、いすけ!どうして…?!」

『だ、いじょうぶか…?』

「大丈夫…」

彼は苦痛に耐えながらも私に笑顔を向けたが、
徐々に意識が遠のいていくのがわかった。

彼の後頭部からは血が流れて
血溜まりが広がっていく…

「圭介!しっかりして!」


救急車が到着するまですごく長く感じた。
私はずっと圭介の名前を呼び続けた。
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