もう一度、その声が聞きたかった【完結】
(圭介 side)

俺たちは作業を終えて店を出る。

終電時間が迫り、
今日も彼女と話せなかったと落ち込む俺。

足早に駅に向かっていたが
俺はずっと違和感を感じていた。
店を出てからずっと見られている気がしていた。

改札を通る前
さり気なくうしろを振り返る。
するとメガネをかけた男とバチっと目が合った。

(あいつ、さっき店の前で見かけたな…)

俺が店に駆けつけた時に
店前の花壇に座っていた男だ。

周りの店舗が閉店時間を迎え
人通りも少なかったからか
その男がやけに目についたのだった。

彼女と改札口で別れたあと
一度ホームに降りたが
なぜか彼女が気になり降りたばかりの階段を駆け上がった。

『〜〜なんとか言えよっ!』

男の怒鳴り声が耳に入る。

男の目の前には震える彼女。
明らかに様子がおかしい。

俺が彼女に近づいた時
男が彼女の肩を押した。

彼女のうしろにはホームに続く降り階段。

『さくらっ』

俺は慌てて彼女の腕を掴み
自分に引き寄せ抱きしめた。

全身に強い衝撃が襲う。

彼女の声が聞こえて
彼女の無事を知り安心した。

彼女の顔がどんどん霞んでいき
俺は真っ暗な世界に落ちた。
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