もう一度、その声が聞きたかった【完結】
和田さんはしばらくして帰って行った。


彼はまだ眠ったまま。


追加の検査をしても異常はなかった
と医師は言う。

明日の朝まで様子を見る事になった。

一旦家に戻り、軽くシャワーを済ませて
着替えを持って病院に戻る。
私は許可を得て今日も病室に泊まる予定。


「圭介…早く目を覚まして…」

『・・・』

私は彼の手をさすり、掌を強く握った。

すると、彼が私の手を握り返す。
それに気付いた私は何度も彼の名前を呼んだ。

「圭介っ!圭介っ!」

彼がゆっくり目を開けた。
目がキョロキョロ動き、私と目が合う。

「ねぇ、わかる?」

『・・・』

私はナースコールームを押して医師を呼ぶ。

到着した医師は彼を診察して何個か質問をした。

”あなたのお名前と年齢は?"

『鷲尾圭介、26歳』

''ここがどこかわかりますか?''

『病院…ですよね?』

''なぜ、病院にいるかわかりますか?"

『んっと、ちょっと覚えてないです』

''この女性は誰かわかりますか?''

『僕と…知り合いですか…?』
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