もう一度、その声が聞きたかった【完結】
私は病室にいるのがツラくなり
病院の中庭へと逃げた。

ベンチに座り夜空を見上げ
冷たい空気を思いきり吸い込み深呼吸する。

少し頭がスッキリした。

彼の記憶から過去の私はいなくなった。

楽しい思い出はもちろん
悲しい、ツライ思い出も一緒に。

今後、思い出す日がくるかはわからないが
彼にとっては強いストレスになっていたのだから
思い出す必要はないのかもしれない。

私だけが知っていて思い出にしていれば
それでいいんだ。

私は彼にとって
ただの取引先の'倉木さん'だ。

''よしっ!''


気合いを入れてベンチから立ち上がる。

彼に今の状況をしっかり説明しないといけない。
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