リサイクルショップ おおたき
カウンターに、一人の女が訊ねてきた。
「大滝さんお願いします」
と彼女は岩野に向かって言った。
「お兄さん、大滝さんじゃないですよね」
「はい、大滝さんじゃないです」
何を言われているのかよくわからないままに、岩野は「店長!」と叫んで大滝を呼び出した。「お客さんです」
大滝はご指名とは何事か、祖父のつながりの人間だろうか……と、不安になりながら出て行って驚いた。
「……誰だっけ」
「早坂です。早坂聡子」
「うん、顔は覚えてるんだけど。そういう名前だったか」
「一応同じクラスだったよね」
「まあそうだな」
「同窓会に明らかに大滝君じゃない人が来てたから、気になってんだ」
そこでようやく、大滝は同窓会に大滝と偽って岩野を送り込んだ自分たちの所行を思い出した。
「あーそれか。それにはいろいろ事情があってだな」
「うん、よくわかんないけど楽しそうだった、大滝君じゃない人」
大滝じゃないと気づいている人間にすれば、同窓会で替え玉なんてさぞ奇妙に感じただろう。が、早坂はそれ以上のことは訊ねてこなかった。
「早坂さんはなんか用事?」
と、大滝はあたりを見渡しながら言った。早坂が欲しがるようなものは、なにかあっただろうか。
「用事っていうか」
早坂はショートヘアの前髪を耳にかける仕草をする。
「会いたかったの。大滝君に」