雲間に抜ける春一番
すべてのはじまり。
「あー、……彼氏欲しい。」
窓際の席ならではの外の景色を遮るように、脱力した腕をダラン、と伸ばして机に伏せる。
「……まーた言ってる。咲良、今月それ何回目?」
伏せた頭の頭上からそう言ってため息がもれる声がする。
やれやれ、とでも言いたげな雰囲気にガバッ、と音がなりそうなぐらいの勢いで頭を上げる。
「~~っ、だって高校生になったら彼氏が出来ると思ったのに全然出来ない!!」
「別に彼氏は作ろうと思って作るものじゃないって言ってるでしょ」
「…奈乃はいいじゃん、中学から付き合ってるラブラブ~な彼氏様がいるから!」
少し顔が赤く染まりながら眉毛をつり上げる目の前の彼女は加藤 奈乃。
中学校からの付き合いで、一向に発展しない私の恋愛話を毎度呆れながらも聞いてくれている。
……あとイケメンでハイスペックの彼氏もちだったりもする。
「…でもほんとに彼氏作ろうたって、好きじゃなければ全部意味ないのよ」
「…あーーーーーーもうっわかってますよー!!」
例のごとく大正論を返されて撃沈。
シクシク…と嘘泣きをして悲しさをアピールするも目の前の女からは引いた目で見られて終わった。
………ガヤガヤ
「ん、?なんか騒がしい…?」
「あぁ、例のやつでしょ、いつもの」
「…………あ、なるほど、
⸺⸺⸺"王子"か。」
ガヤガヤと騒がしくなった廊下には、キャーキャーという女子たちの黄色い声も混ざっており、意識を向けてみれば一目瞭然の空間。
こんなに大勢の人が騒ぎ立てる人なんてこの学園には一人しかいないのだ。
一条 瀬那。
学園一のモテ王子。
黒髪のサラリと長すぎない髪に高身長の文武両道のハイスペックイケメン。
ただ、その性格には難ありで……
「女の子達もめげないよねー、あんな態度とられてるのに。」
「中にはミステリアスで冷たいところもステキ!っていうマニアックな子も増えてきたそうだしね〜」
「……ミステリアス、というか………"女嫌い"なのに。」
なんか女の子も王子もどっちも可哀想だね、なんて他人事のように呟く。
そう。彼は女嫌いで女子からの告白は聞かず待たずでスルー。あまり他人に興味がなくまとまりつく人は女でも男でも軽蔑するような目を向け手を振り払う。
彼に向けられた黄色い声も彼の耳にはまっているイヤホンで遮られる。
そこからつけられたあだ名は⸺⸺⸺〖冷酷王子〗だ。
「んー、まぁそうね、どちらにも明るい未来なんて見えないわよね…
極端に言ってしまえば、王子に好きな人が出来れば解決すると思うけど。」
「え?なんで王子に好きな人の話?」
「だって王子が女嫌いだとはいえ、恋人はおろか好きな人すらいないんじゃ僅かな希望に期待する人はたくさんいると思うのよ。」
「だから王子が誰かに夢中になればお互いにいい方向に向くと思わない?」という奈乃の声がすごく耳に残って反響した。
不思議なほどその言葉がすとん、と腑に落ちた。
あぁ、そっか。ちょうどいい相手がいるじゃん。
「奈乃、私頑張るよ」
「え?何が?」
窓際の席ならではの外の景色を遮るように、脱力した腕をダラン、と伸ばして机に伏せる。
「……まーた言ってる。咲良、今月それ何回目?」
伏せた頭の頭上からそう言ってため息がもれる声がする。
やれやれ、とでも言いたげな雰囲気にガバッ、と音がなりそうなぐらいの勢いで頭を上げる。
「~~っ、だって高校生になったら彼氏が出来ると思ったのに全然出来ない!!」
「別に彼氏は作ろうと思って作るものじゃないって言ってるでしょ」
「…奈乃はいいじゃん、中学から付き合ってるラブラブ~な彼氏様がいるから!」
少し顔が赤く染まりながら眉毛をつり上げる目の前の彼女は加藤 奈乃。
中学校からの付き合いで、一向に発展しない私の恋愛話を毎度呆れながらも聞いてくれている。
……あとイケメンでハイスペックの彼氏もちだったりもする。
「…でもほんとに彼氏作ろうたって、好きじゃなければ全部意味ないのよ」
「…あーーーーーーもうっわかってますよー!!」
例のごとく大正論を返されて撃沈。
シクシク…と嘘泣きをして悲しさをアピールするも目の前の女からは引いた目で見られて終わった。
………ガヤガヤ
「ん、?なんか騒がしい…?」
「あぁ、例のやつでしょ、いつもの」
「…………あ、なるほど、
⸺⸺⸺"王子"か。」
ガヤガヤと騒がしくなった廊下には、キャーキャーという女子たちの黄色い声も混ざっており、意識を向けてみれば一目瞭然の空間。
こんなに大勢の人が騒ぎ立てる人なんてこの学園には一人しかいないのだ。
一条 瀬那。
学園一のモテ王子。
黒髪のサラリと長すぎない髪に高身長の文武両道のハイスペックイケメン。
ただ、その性格には難ありで……
「女の子達もめげないよねー、あんな態度とられてるのに。」
「中にはミステリアスで冷たいところもステキ!っていうマニアックな子も増えてきたそうだしね〜」
「……ミステリアス、というか………"女嫌い"なのに。」
なんか女の子も王子もどっちも可哀想だね、なんて他人事のように呟く。
そう。彼は女嫌いで女子からの告白は聞かず待たずでスルー。あまり他人に興味がなくまとまりつく人は女でも男でも軽蔑するような目を向け手を振り払う。
彼に向けられた黄色い声も彼の耳にはまっているイヤホンで遮られる。
そこからつけられたあだ名は⸺⸺⸺〖冷酷王子〗だ。
「んー、まぁそうね、どちらにも明るい未来なんて見えないわよね…
極端に言ってしまえば、王子に好きな人が出来れば解決すると思うけど。」
「え?なんで王子に好きな人の話?」
「だって王子が女嫌いだとはいえ、恋人はおろか好きな人すらいないんじゃ僅かな希望に期待する人はたくさんいると思うのよ。」
「だから王子が誰かに夢中になればお互いにいい方向に向くと思わない?」という奈乃の声がすごく耳に残って反響した。
不思議なほどその言葉がすとん、と腑に落ちた。
あぁ、そっか。ちょうどいい相手がいるじゃん。
「奈乃、私頑張るよ」
「え?何が?」