日直当番【完結】
 テストがすべて返却された翌日の昼休みには、廊下に順位表が貼り出されていた。廊下はすぐに順位表を見る人だかりができている。隣の進藤くんは優雅に読書を堪能している。私は憂鬱な気持ちで机にへばりつきながら進藤くんに聞いた。

「順位表見に行かないの?」

「結果は分かっているので」

 本から目線を外さずに、さも当たり前のような口ぶりで言った。

「進藤先輩!」

 教室後方から聞き覚えのある声がした。進藤くんは読みかけの本にしおりを挟んで声の主の元へ向かった。例のごとく、ふたりの会話に聞き耳を立ててしまう。

「先輩!私、先輩のおかげでめっちゃ点数上がりましたよ!」

「よく頑張りましたね。あなたの努力の成果ですよ」

「私、期末考査が終わったら先輩に伝えたいことがあるって言ったじゃないですか」

「ええ」

「あの、今日の放課後、SHRが終わったあと、管理棟3階の渡り廊下に来てくれませんか?」

 俯き加減で少し恥ずかしそうにその子は言う。

「分かりました」

 短い会話だったけど、それは何かが決定的に変わる道しるべだった。否応なく私の胸の中がかき乱される。

 進藤くんは顔色ひとつ変えずに自分の席に座り、読書の続きに没頭し始めた。

私は、喉に何かがこみ上げてきたので、机に突っ伏して寝たふりをした。
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