日直当番【完結】
 ぐいっと両手首をつかまれて、両手が顔から引き離される。するとすぐ目の前に進藤くんの顔があったので、びっくりして思わず身を引いた。

「ごめんなさい。もしかして、そういうの、期待しました?」

 自分の耳にダイレクトに進藤くんの声が入ってくる。あのときのことを思い出させる、囁くような、甘い声。

「な…っ」

「顔、赤いですよ」

「その声やめろ!怒ってんの!」

 ばっと進藤くんの手を振りほどいた。

「その声とは?」

 素でやってるなら犯罪的だ。それともとぼけてるのか?

「それより早く着替えて来てください。僕の服で悪いのですが」

 私は進藤くんから手渡された着替えとタオルをひったくり、リビングを出てずんずんと廊下を進んだ。

「あ、脱衣所こっちです」

「ん。そいじゃ、お借りします」

バタン。 

ふと洗面台の鏡の私を見ると、濡れたブラウスからブラが透けて見えていた。本当に眼鏡かけてなくてよかった。とりあえず着替えよう。
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