日直当番【完結】
「はい終了。隣同士で交換して丸つけー」

 終了の合図と同時に教室の中はざわめき始める。私は進藤くんとプリントを交換して、100問テストのプリントを見ながら丸つけをしていった。

 少し右上がりの整ったきれいな字。そして完璧な回答。

 満点かよ。はっ。

 解答欄の下には私の言った通りに『憂鬱』の文字がしっかりと書き込まれていた。

 はっっ。

「『憂鬱』に丸はつけてくれないんですか?」

「嫌味かっ。あんたは嫌味かっ」

 進藤くんは私を見てせせら笑いながら、いつものように左手の中指で眼鏡を上げた。

 進藤くんから返された答案に視線を移すと、赤字で「3」という数字がでかでかと書かれていた。ぎろりと横目で進藤くんを睨んだ。

 進藤くんには何かと腹が立って仕方がない。あの日、進藤くんと日直当番をしたときから、私は進藤くんに負かされてばかりな気がする。いつも余裕ぶっこいて、人を馬鹿にするように薄ら笑いを浮かべる。

声の抑揚も、顔の表情も、変化があまりないから考えてることがまるで分からない。ギャフンと一発かましてやりたい。進藤くんが狼狽える姿を見てみたい。

進藤くんが冷静さを失うときってあるのか?うーん想像しがたい。
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