日直当番【完結】
 私の身体は後ろから誰かに抱きかかえられるようにしてそのまま倒れた。すると突然天井と床がひっくり返って、背中にひんやりと床の冷たさを感じた。

「だからひとりでやるなと言ったでしょう!まったくあなたという人は!」

 私の目の前に険しい表情で声を荒げる進藤くんがいた。あまりの剣幕にこちらが怖気づいてしまうほどだった。しかもさっきのはずみで外れてしまったのか眼鏡をかけていない。

「あの…怒ってる?」

「怒ってますよ。わざと余計な仕事ばかり増やそうとしているんですか?」

「え、そこなの?心配はしてくれないの?」

「ええしましたよ。手が滑ったりして新しい蛍光灯を割ってしまうんじゃないかと」

「何それ。ていうかそろそろどいてくれません?」

 進藤くんが私に覆い被さるような体勢になっていたので、これはビジョン的にヤバイ…。

「せっかく助けてあげたのにその言い方はどうなんでしょう?」

「恩着せがましいんだよ。私の心配はしなかったくせに」

「しましたよ」

「え」

進藤くんは上体を起こして立ち膝になった。

「けがはないですか」

「進藤くんが優しいと調子狂う…」

「僕はいつも優しいです」

進藤くんは真顔で言った。そして私から離れて倒れた脚立のもとへ行った。私はむくりと起き上がってホッと胸を撫で下ろした。
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