日直当番【完結】
「これは?今時な黒縁眼鏡」

「ちょっとレンズが大きすぎませんか」

「なかなか悪くないと思うけどなぁ」

 あれでもない、これでもないといろんな眼鏡を試しているところに、女性の店員さんに声をかけられた。

「どのような眼鏡をお求めですか?」

「あ、この人無愛想なんで、カジュアルでおしゃれな眼鏡がいいんですけど」

「ちょっと、勝手に言わないでください。僕はナイロールの眼鏡がいいです。レンズの下にふちがついていると視界に入って気になってしまうので」

「それならいっそコンタクトにすればいいのに」

「僕は眼鏡がいいんです」

「それでしたら、お顔が逆三角形なので、オーバルの眼鏡がお似合いです。リムが細いものの方がすっきり見えますよ。このあたりの眼鏡はどうですか?」

 店員さんに紹介されたオーバルの眼鏡というのは、縦幅の小さい楕円形のレンズの眼鏡のことらしい。いくつか試しにかけてみると、心なしか柔らかい印象に感じる。

「せっかくなんだからシルバー以外の眼鏡にしてみたら?」

「それは、冒険的ですね…」

「この赤どう?」

 私が手に取ったのは、ワインレッドより暗い赤色のメタルフレームの眼鏡だ。主張しすぎずさりげない色合いだ。眼鏡のつるは、少し太めに作られていて、耳にかける部分に向けてだんだん細くなる仕様になっている。

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