奪われたので、奪い返すことにしました【年齢制限版】
彼女はシリウスと名乗った。
「男性のような名前ね」
わたしがそう言うと、彼女は首を傾げて微笑んだ。
「よく言われます」
(本当に綺麗な女の子だわ……)
シリウスも貴族の令嬢らしいのだけれど、髪結いをしていたことなんかも含めて、詳しいことは教えてくれなかった。
彼女はわたしの愚痴を聞きながら、最先端のネイルやメイク、立ち居振舞い、礼儀作法に流行りのファッション……女性なら知っておいて損はない情報を教えてくれる。
――気づけば、わたしは別人のように綺麗な令嬢に生まれ変わっていた。
艶やかな黒髪に、白い陶器のような肌、薔薇色の頬に桜色の唇。
流行の桃色のドレスに身を包んだわたしは、童話に出てくる花の妖精のようだった。
「ありがとう、シリウス……こんなに別人のように生まれ変われるなんて……すごく嬉しいわ……」
お礼を言いながら、彼女の元に向かおうとしたところ――。
「きゃっ……!」
ドレスの裾を靴で踏んでしまい、前のめりに倒れてしまった。