奪われたので、奪い返すことにしました【年齢制限版】
そんなわたしの身体を、シリウスは受け止める。
彼女に抱き着く格好になってしまったわたしが、彼女の顔を見上げると、深い海のように煌めく蒼い瞳と出会う。
なぜだか、わたしの心臓がどきんと跳ねた。
「スピカは、相変わらずおっちょこちょいだね……うっかり変な男に騙されるぐらい、とても純粋で可愛らしい……奪い返そうとは言ったけれど、元婚約者の侯爵に手渡すのはなんだか癪だな……」
シリウスの言い方がなぜだか、男らしく聞こえてしまった。
(わたしったら、女性相手に胸がドキドキしてしまうなんて……)
「シリウスに相談するし、もう変な男に騙されたりはしません……」
「本当かな?」
そう言いながら、彼女はわたしの耳にちゅっと口づけてきた。
男女問わず、初めてそんなことをされてしまい、どんどん心臓の音がうるさくなる。
そんな胸の内をごまかすように、わたしは彼女に向かって話しかける。
「もし、シリウスが男性だったら、話しやすくて優しくて……恋をしてしまっていたかもしれないわ」
わたしがそんな軽口を叩くと、彼女はふんわりと笑った。
「それは良いことを聞いたな――嬉しいよ、スピカ」
彼女の微笑みに、心臓が落ち着く暇もない。
「ああ、スピカ、そう言えば――」
そうして彼女はにっこりと微笑みながら、わたしに告げる。
「今度、私の親戚の屋敷で舞踏会があって、そこにデネブ侯と件のご令嬢も来るんだけど――一緒に奪い返しに行こうか――?」
こうして、わたしはシリウスと一緒に、デネブを取り返しに向かうことになったのだった――。