ユダの巣窟
まだ活気立っていないテントとテントの間を通ってから彼らの元へ行く。既に起床して身支度している人もいれば、まだ眠っている人も然り、中には仕事の付き合いと嘯き嘯き(うそぶき)朝っぱらから飲んでいる奴らもいた。

いつもが何も変わらなさすぎる。変な気分だ。

そう思いふけっているうちに例の馬車へと近づく。

いつも通り、何も変わらない。この先もずっと同じ日を繰り返すんだろうな。そう思った。

春人の兆しがようやく差し掛かった。けれども白い息を垂れ流し、馬車の唯一の出入口を開けようと金属がかすれ合う音をたてながら、錠にあうカギを探す。
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