ユダの巣窟

これも違う、これでも無い。一体どれであったかと考えを巡らせていた時、ズタ、ズタ、と地面に靴をひきずらす音が聞こえたかと思うと、

「おや、これは早起きなピエロがよく居たもんだ。」

と同僚道化師、エースがノコノコと現れてきた。

「そんで？お困りかい?」

と無愛想な声とは裏腹に、何人もの人を裏切ってきた笑顔で聞いてきた。

「僕はやけに君の笑顔が気に入らない。幾人もの人の信頼を削ぎ落とした、その顔が、ね。」

と言ったところ、

「これはあくまでも、営業スマイルさ。営業スマイル。それに、そんなふうに言われたら悲しいじゃあないか。まっ、僕のこの顔に負けた阿呆共を始末してきた話は肯定しておくか。」