ユダの巣窟

馴れ合い

いや、考えても無駄だと頭を振り仕事に戻る。

半ば悲しく、不安になりながらも使い古されて今にも壊れそうな馬車の方へ足重に向かった。

…………。

ダニーの言う通り、最近考え事ばかりだ。
何時からこうなったんだろう。

それに、『僕に限って』と、ダニーの発言が気になる。

本当に考えても無駄なのかもしれない。

相思に区切りをつけるために、目を閉じ、深く息を吸った。

(本当にどうかしてるな…)

煽り立てるように馬車の扉やら壁やらに彫られた人の爪跡らしき傷を見つけた。

僕はそっと撫でた。

この人達がどんな心境でここに連れてこられたかは安易に想像出来た。
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