稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~
 私、ピンクのドレスです。やたらとフリルも着いた……ちょっと子供っぽいデザインのドレスです。
 しまった。お母様がいないから、ドレスに口を出すのがお父様とお兄様で……全くあてに出来なかったみたいだ。これ、17歳むきじゃないよ。どう考えても、12、3歳までの子供が着るデザインでしょう。
 ……まぁ、男性の視線を引きたいわけじゃないからいいんですけど。それに、真っ赤や紫なんかの妖艶な色といわれるものよりピンクは好きなのは確かです。
 ふわふわとして柔らかい感じがしていいよね。
「無理はするなよ。気分が悪くなったらすぐに言うんだぞ?」
 兄が心配そうに私に耳打ちを繰り返す。
 会場に入って、壁際にまで私を案内すると、兄は自分の婚約者のもとに足を運ぶ。本当は今日は婚約者をエスコートしてくる予定だったのに、悪いことをした。
 ……さて、どうしたものか……。アレルギーが軽い人なんているのかな?
 試しに、給仕の男性に飲み物を頼んで受け取った。
 触れることはないものの距離的にはあと10センチで触れそう。
 ……くしゃみが出た。
 果実水を飲んでいると、背後に誰かが立った。
「見ない顔だねぇ?どこのご令嬢かな?今日は玉の輿目指して頑張って舞踏会に来た感じ?」
 振り返ると、同じくらいの背丈のニキビ面の男の人がいた。
 うっ。
 ダメだ。この人。
 この距離でも全身がざわざわして痒くなってきた。

「私はね、こう見えても伯爵家の者なんだよ?」
「あの、失礼します」
「おいっ!ちっ。なんだよ。時代遅れのドレスを着た貧乏男爵令嬢とかだろ?」
 腕を、捕まれた。
「ちょっと顔がいいからって、お高く留まりやがって。伯爵の私が愛人にでもしてやろうって言ってんだよ」
 痛い。捕まれたところからきっと赤くはれあがってきている。手袋をしているから分からないけれど。真っ赤だろう。
 吐き気もしてきた。
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