稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~
「そんな幼女趣味の婚約者などいない方がマシじゃありません?」
 女性たちが私を嘲る声が聞こえてきて、ほっとする。
 男性が近くにいない、女性がいるのは幸せなことだ。
 しかもどうやら、私のこのドレスは、あまり男性受けがよくないようだ。
 これからも、もし同じように婚約者探しに舞踏会に出なさいとお父様に言われるなら、またピンクのドレスにしよう。
 しかも、もっと幼い子が好むようなスカートが大きく膨らんでいるもの。胸元にまでたくさんのレースをつけてもらって、そう、大きなリボンをたくさんつけてもらいましょう。頭にも同じ布で作ったリボンをつけましょう。
 無事に女性たちの間をすり抜け、窓から庭に出る。
 幸い、まだ舞踏会は始まったばかりで、参加者たちは出会いを求めて会場の中にいる人がほとんどのようだ。
 これが、終盤になってくるにつれて、庭に出て静かに語り合う人たちが増えるとお兄様が言っていた。
 そうそう、婚約者がいる人たちは顔見知りへの挨拶を済ませると庭に出るとか。
 流石にまだそうい人たちもいない。

 ほっとして、薔薇の迷路まで移動する。
 始まったばかりでまだ外は明るい。今日は午後の3の刻から、8の刻までの長丁場だと聞いている。……もちろん、途中からくる人や途中で帰る人もいる。
 薔薇の迷路……懐かしい。
 今の時期は花はないけれど、花の咲いた時期は本当に美しくて。お母様におねだりして連れてきてもらっていた。
 そういえば、公爵夫人のマーガレット様のお姿をまだ見ていない。久しぶりに会ってご挨拶をしたい。少し落ち着いたら、会場に一度戻ろう。
 薔薇の迷路……7年ぶりでも迷うことなく噴水までたどり着くことができた。
「ここにも誰もいない」
 ほっと息を吐きだす。
 東屋に行かずにここで時間を潰そうか。
「ああ、そうだわ」
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