空よりも高く海よりも深く
最初の名前聞いてくる事件はあったものの彼女は基本的に普通の人だった。
クラスメイトの名前を覚えていないだけで、特別愛想が悪いとかは無かった。
消しゴムを落としたら拾ってくれるし、ノートを見せてといえば見せてくれる。
僕は後ろの方で先生からはあまり注目されないし、隣の人も悪い人ではないしと今回の席は当たりだなと独りごちていた。
そんな平凡だなと思っていた日の地理の時間だった。
「じゃあ、寺本。この公式を使ってフランスの現在時刻を求めてみろ。」
完璧に油断していた。僕はノートを取っている振りをして、今月のお小遣いの割り当てを考えていた。
ノートに書いてある、食費1000円、本代800円という呑気な文字が恨めしい。
運が悪いことに、いつも仲良くしていて頭もいい石田からは席が遠い。
到底答えを聞くことは難しい。
ここは、分かりませんと申し訳なさそうに頭を下げておこう。
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