失恋ガール

HRが始まる5分前に学校に着き、安堵した。教室のドアを開けようとしたら、中から聞き覚えのある笑い声が聞こえた。こっそり開けると、後ろのロッカーに座って話している男子と目が合った。黒髪の天然パーマにメガネをかけた、大友翼である。私は、すぐに自分の席に着こうと思ったが、私の苦手な女子グループが占領していて座れなかった。
｢お！ 遅刻ギリギリの長月が来たぞ！｣
翼はロッカーからおりて近づいてきた。
私は、目立つのが何よりも嫌いだ。だから、毎日のように話しかけてくる翼とは、あまり関わりたくない。
私は、彼の言葉を無視して教室を出ようとした。しかし、目の前に黒髪ポニーテールの女子が現れる。身長が高い訳では無いが、凛とした佇まいの佐倉瑞希は口を開く。
｢翼！ またもかにちょっかい出して！ 少しは、もかの気持ちを考えなさい！ もかごめんね。嫌な思いしたよね…？｣
いつも私のことを想ってくれている瑞希。彼女が私をどう見ているのかは分からないが、少なくとも私は、親友だと思っている存在だ。
｢瑞希、大丈夫だよ。いつもの事だからね｣
｢でも、嫌な時はちゃんと言わないと……｣

キーンコーンカーンコーン……

瑞希が話している時にチャイムがなった。私達は席に座り、先生が来るのを待った。