ゆるふわな君の好きなひと
君とのはじまりは
由利くんと初めて話したのは、高一の秋だった。
その日は朝からお腹が痛くて。ちょっと無理して登校してきたら、二時間目頃から椅子に座っているのもつらくなった。
それでも無理して授業に出ていたら、仲の良い璃美が見かねて、保健室に連れて行ってくれた。
「昼休みに迎えにくるから、ゆっくり寝てね」
わたしを寝かせた璃美が、上から布団をかぶせて保健室の窓を少し開ける。
太陽の日差しがぽかぽかとあたる窓側のベッドは心地よくて。
璃美が出て行ったあと、わたしはすぐにうとうととし始めた。
まどろみのなかで寝返りを打つと、ザッとカーテンレールが引かれる音がする。
驚いて目を開けると、バスケ部の由利くんが真上からわたしのことを見下ろしていた。
肌色が白くて綺麗な顔をした由利くんは、入学当初から学年の男子たちのなかでも群を抜いて目立っていて。違うクラスのわたしも、彼の顔や名前は知っていた。
たまに、女の子たちに付き纏われている由利くんのことを廊下で見かけるのだけど……。
わたしには、話しかけてくる女の子たちに、ふにゃっとした笑顔を返している由利くんの目が本気で笑っているようには見えなくて。
かっこいいけど、存在全部が嘘っぽいというか……。
なんとなく、読めない人だなというのがわたしが由利くんに対して抱いていた印象だった。
そんな由利くんが今目の前にいて、無表情でわたしのことをジッと見ている。
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