ゆるふわな君の好きなひと
ため息を吐く眞部くんをこっそりと見ていると、ふいに顔をあげた彼と目が合った。
「あ、ねぇ、つーちゃん、つーちゃん!」
眞部くんが、大きな声でわたしを呼んで手招きをする。
きっと、由利くんのことについて聞いたいんだろう。
ずっと無視されているわたしに話すことなんて何もない。
あまり気が進まないな。そう思いながらも、無視するわけにもいかないので、のろのろ立ち上がってドアのほうに移動した。
「圭佑、いつ帰った?」
「眞部くんが来る少し前」
「そっか。最近、あいつ反抗期なんだよね。朝迎えに行っても全然出てこないし、部活もサボり気味だし、電話にも出ねーし」
ポケットからスマホを取り出した眞部くんが、困ったようにクシャリと髪を掻く。
「つーちゃん、あいつが機嫌損ねてる理由、何か知ってる?」
ラインを開いて片手でメッセージを打ちながら、眞部くんがわたしに視線を向けてきた。