ゆるふわな君の好きなひと
わずかに動揺を見せたわたしをどう思っただろう。
もしかしたら、何かあったと勘付いたかもしれない。
でも眞部くんは、わたしと由利くんのあいだに何があったか問い詰めてきたりはしなかった。
その代わりに、
「圭佑んちってね、共働きで、お母さんもキャリアがあって忙しい人で、出張も多くて。昔から、家を留守にしがちなんだよね。子どものことも割と放任気味で、愛情がないってわけじゃないけど、接し方がドライっていうか。そういう環境に慣れてきたせいか、圭佑は昔から、寄ってくる人間を拒んだりしないけど、逆にあんまり人にも興味ないのね。だけど、親が不在な分、六歳年上のおねーちゃんがめちゃくちゃ圭佑のこと可愛がってて。圭佑も、おねーちゃんにはよく笑って懐いてたんだよね」
と、由利くんの家のことを話し始めた。
「うん……」
突然なんだろう。困惑気味に頷くと、眞部くんが眉をハの字にして笑う。
「圭佑ね、基本的に人に関心ないけど、気に入ってる人には甘えるし、すごく執着すんの」
「……うん」
それは、なんかわかる。わたしは、少し前まで由利くんに気に入られてたんだろう。