ゆるふわな君の好きなひと

 左腕が少し重そうだけど、由利くんは岡崎さんの手を振り払うことはせず、彼女のやりたいようにさせていた。

 由利くんに腕を引っ張るようにして歩きながら、横から彼の顔を上目遣い覗き込む彼女の好意はあけすけだ。

 ときどき由利くんの耳元に口を寄せるようにして話しかけていて、その距離は友達にしては近すぎる。

 由利くんはモテる。ただそこにやる気なく立ってるだけで、誰かがふらりと近付いてくる。

 由利くんが女の子たちに囲まれてベタベタとくっつかれているところも、そんな彼女たちを無関心で受け入れている由利くんの姿も、これまでに何度も見てきた。

 名前を覚えてもらえなくても、適当にしか相手にされていなくても、由利くんを好きな女の子たちは少しの可能性に期待して彼に近付いてくる。

 彼女たちのことをいつも呆れた目で見ていたわたしには、心のどこかに、自分が由利くんに気に入られているという自信があったのかもしれない。

 だけど今のわたしは、他の女の子に触られている由利くんを見て、胸がちりちりしていた。

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