ゆるふわな君の好きなひと
由利くんに目も合わせてもらえなくなった今、気安く彼に触れている岡崎さんが羨ましい。
由利くんのいる集団は、大きな声でしゃべって、楽しそうに笑いながら、わたしのいるほうへと移動してくる。
わたしが歩いてきた方向にある、ファーストフード店に向かおうとしているのかもしれない。
集団のなかの誰かが「腹減った。ふつーに、セット食お」と言っている声が聞こえてきた。
少しずつ集団との……、というより、由利くんとの距離が狭まってきて緊張するけど、スマホに視線を落としたままの彼は、わたしの存在に気付いていない。
悲しいけど、このまま気付かれないままのほうがいいのかも。
手のひらを握りしめて、うつむく。
そのとき、そばを通り過ぎていく集団の中から岡崎さんの甘えた声が聞こえてきた。
「ねぇ、由利ー。ずっとスマホばっか見てないで、ちゃんと話聞いてよー」
「んー」
「んー、じゃなくてさ。今度、ふたりでどっか遊びに行かない?」
これ、デートの誘いだ。胸がズキッとした。