ゆるふわな君の好きなひと

 体育の授業中なのに、体育着にすら着替えていない由利くんは、サボって寝る場所を探してここに来たんだろう。

 初めて話したときに「おれの場所」と主張していた窓側のベッドを譲ろうとすると、わたしが立ちあがるよりも先に、由利くんがベッドに上がり込んできた。


「ちょっと……。せめて、わたしが退くまで待って……」

 相変わらずマイペースな由利くんの行動に困惑する。

 上履きに足を入れて、踵を踏んだまま急いで立ち上がろうとすると、ふいに腕をつかまれて後ろにグイッと引っ張られた。


「え……?」

 ベッドに尻もちをついてひっくり返り、つま先に引っ掛けているだけだった上履きが脱げてしまう。

 何が起こったか理解できないままに天井を見上げていると、耳元にふっと息がかかった。


「行かないでって言うなら、青葉だって行かないでよ」

 不貞腐れたみたいな、だけど少し甘えるみたいな低い声が耳に届いて、心臓がドクンと跳ねる。

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