ゆるふわな君の好きなひと
「いーよ、別に。久我山先輩、おれから見てもかっこいいし。頭いいし、おれみたいに適当じゃないもんね」
声のトーンを聞けば、由利くんが本気で怒ってるわけじゃないことはわかる。ちょっと拗ねて、駄々をこねてるだけ。
でも、背中を向けられると淋しくて。胸がギュッと切なくなった。
過去に久我山先輩のことをかっこいいと思ったことがあるのは事実だけど、先輩に対する気持ちはやっぱりただの憧れで、由利くんへの気持ちとは違う。
ひとつひとつの言葉や仕草にドキドキしたり、切なくなったりするのは、由利くんだけだ。
「もう一回告白の返事をするチャンスをもらうには、どうしたらいい……?」
猫背で寝転ぶ由利くんのカーディガンの背中をつまんで、そこにおでこをくっつける。
特に拒絶されたりしなかったから、その存在を確かめるように広い背中にぐりぐりとおでこを寄せたら、由利くんがふっと吹き出してくすぐったそうに笑った。