ゆるふわな君の好きなひと
「昨日、岡崎さんと約束してたよね」
「岡崎って言うんだ、あの子。知らなかった」
由利くんが平然とした顔でそう言うから、一瞬絶句してしまう。
「由利くん、名前も知らないのに遊ぶ約束したの?」
「見たことある顔だなーとは思ってたよ。昨日の朝、駅前で捕まって、学校に着いても、いつ遊べるかってしつこく聞いてくるんだもん。だから適当に『今日?』って答えたけど……。正直、保健室で青葉に『行かないで』ってお願いされるまで、約束したこと自体忘れてた」
へらっと笑う顔を見て、我が好きな人ながら、なんて薄情なんだと呆れてしまう。
「由利くん、謝りも断りもせずに岡崎さんとの約束すっぽかしたの?」
「だって、その岡崎ってやつのクラスも連絡先も知らないし」
「岡崎さん、隣のクラスだよ」
「ふーん」
岡崎さんに関して一ミリも興味なさそうな由利くんの表情を見て、わたしが余計な心配する必要なかったんだなって思うけど……。
約束をすっぽかしておいて全く悪びれていない由利くんのことが少し心配だ。
「期待だけさせて、すっぽかすのは良くないよ」
「行かないでって泣いて頼んできたのは青葉のくせに」
たしかに、岡崎さんとデートなんてして欲しくなかった。
由利くんが行かなくてよかったって思う。だけど……。