ゆるふわな君の好きなひと

◇◇◇


 その日、ほとんどの授業を机に伏せて寝て過ごしていた由利くんだったけど……。

 昨日までは遅刻してきたり、授業中に教室にいないことが多かったから、教室にいるだけで各教科の先生に「今日は出てきたんだな。由利、えらいぞー」とめちゃくちゃ褒められていた。

 授業もまともに聞かずに寝てるのに、教室にいるだけで褒められるなんてさすがだ。

 そんな由利くんは、休み時間はぼーっと席に座っているか、ふらーっとわたしのところにやってきてはヘラヘラしていて。

 昨日までわたしと目も合わせようとしなかった人とは思えないほどの豹変ぶりに驚いてしまう。

 放課後。わたしは、ホームルームが終わったあとも机に伏せている由利くんの薄茶の頭を見つめながら、立ち上がった。

 午後になって太陽の位置が変わり、窓際の陽射しの強さは和らいでいる。

 机にできた陽だまりに身を委ねて眠る由利くんは、とても心地良さそうだ。

 たぶん、もう少ししたら眞部くんが由利くんを部活に誘いにくる。

 起こしてあげたほうがいいかな……。

 由利くんのそばを通り過ぎるときに一瞬考えたけど、あんまり気持ち良さそうに寝てるから、邪魔しちゃ悪いような気もする。

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