ゆるふわな君の好きなひと

 眞部くんや璃美曰く「反抗期」を起こして二週間以上も部活をサボっていた由利くんは、昨日からバスケ部にも行き始めた。

 と言っても、自分の意志ではなく……。

 わたしと由利くんが仲直りしたという情報を璃美から聞きつけた眞部くんに、ほとんど引き摺るように連れて行かれていた。

 ひさしぶりに放課後の教室に現れた眞部くんは、ここ数週間の由利くんの行動について厳しく説教していたけれど、由利くん本人はあまり気にしている様子もなかった。

 それどころか、めちゃくちゃ怒られたあとで「今日は青葉と帰りたかったのになー……」と不平をこぼしていて。

「お前、ほんといい加減にしろ」と眞部くんにマジギレされていた。

 だけど眞部くんも、不平を言いながらもちゃんと部活に参加した由利くんに、内心ほっとしていたと思う。

 説教しているときの眞部くんの声はめちゃくちゃ怖かったけど、由利くんの腕を体育館へと引っ張っていくときの眞部くんの横顔は、どこか嬉しそうだった。


「つーちゃん、ありがとね」

 眞部くんにお礼を言われて、わたしが《原因》で由利くんの態度が変化したのかと思うとちょっと恥ずかしかった。

 由利くんの素行や機嫌が、わたしの言葉ひとつで大きく左右されてしまうなんて……。

 面倒くさいくらい執着されてたんだなって思うし、そんな由利くんがちょっと可愛く思える。

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