ゆるふわな君の好きなひと


「帰るなら、起こしてくれたらいいのに」

 由利くんが大きな目でわたしの顔をジッと見上げて、不服そうに口を尖らせる。

 朝に貼ってあげた絆創膏が、まだ左頬に付いているせいか、その表情がやんちゃな小さな子どもみたいだ。


「気持ち良さそうに寝てるから、起こしたら悪いかなって……。それに、わたしが起こさなくても、眞部くんがもうすぐ呼びにくるだろうし」

「えー。おれは晴太じゃなくて、青葉の声で起こされたい」

 眉根を寄せた由利くんに、甘えたような声で言われてドキッとする。

 告白される前から、由利くんはわたしに対して、よくこういうことを言ってきていた。

「青葉がいい」と、言われる度に嬉しくなったけど、どうせ気まぐれなんだろうなって思いが常に付き纏っていて。

 期待しないようにって、自分で自分に言い聞かせていた。

 だけど今なら、全部本気だったんだなってことがわかる。

 ふふっとニヤけると、由利くんが不思議そうに首を傾げた。

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