ゆるふわな君の好きなひと
◇◇◇
由利くんの部活が終わるまでは図書室で待っているつもりだった。それなのに……。
由利くんに引っ張って連れて行かれた場所は、体育館だった。
「終わるまで、練習見てて」
にこにこ笑顔の由利くんが、壁際に用意した椅子にほとんど無理やりわたしを座らせる。
「で、でも……。わたし、邪魔じゃない?」
「大丈夫、大丈夫」
椅子から腰を浮かそうとすると、由利くんがわたしの両肩にのせた手で押さえつけてくる。
そんなわたし達のやりとりを、一、二年生の他の部員がチラチラと見てきた。
二日前まで部活をサボっていた由利くんが、また勝手なことをしている……。
そんなふうに思われているような気がする。
「わたし、図書室に行っとくよ?」
完全なるアウェイ感に晒されて居た堪れない気持ちになっているわたしに、由利くんはやっぱり「へーき、へーき」とヘラヘラ笑いかけてくる。
「おれ、着替えてくるけど、勝手に出てかないでね。水とタオル持ってて」
「え、ちょっと……」
スポーツバッグから取り出したペットボトルとフェィスタオルをわたしの手に預けると、由利くんは着替えに行ってしまう。
壁際に取り残されたわたしは、なるべく人の目に留まらないように背中を丸めて縮こまるしかなかった。
これまでも由利くんの気まぐれには散々振り回されてきたけれど、付き合ってからも変わらず振り回され続けそうだ。