ゆるふわな君の好きなひと
不自然な場所に置かれたパイプ椅子にぽつんと腰掛けるわたしのことを、男子のバスケ部員だけでなく、体育館をシェアして使う女子バスケ部の子達までがじろじろと見てくる。
みんなからの視線が恥ずかしすぎて、由利くんが着替えから戻ってきたら絶対に図書室に避難しようと思ったけど……。
練習が始まれば、みんなわたしの存在なんて気にならなくなったのか、あまり視線を感じなくなった。
みんなの関心がわたしから逸れると、ようやく少しリラックスしてきて、練習風景をゆっくりと眺める余裕も出てくる。
由利くんがバスケをやっているところを見るのは初めてだ。
眞部くんや璃美から、由利くんは「ちゃんとやればうまいのに真面目にやらない」という話を常々聞かされていたけど……。
由利くんは、わたしの想像してたよりもずっと真面目に練習に参加していた。
授業中に寝ているときも、上履きをペタペタ引き摺って歩いているときも、背中を丸めてやる気がなさそうなくせに、ボールを持った由利くんの動きは普段の姿からは想像できないくらいに俊敏でかっこいい。
普段は眠そうに見えるタレ目気味のダークブラウンの瞳も真っ直ぐな光を宿していて、真剣な横顔がすごく綺麗だった。
こんなに真面目な由利くんの姿を見られるなんて、かなりレアだ。